202005/17
FREE FREE TALK

「わかってる」は何もわかっていないと思え。 #フリフリ012

FREE FREE TALK
2020.05.17

「わかってる」は何もわかっていないと思え。 #フリフリ012

2020.05.17
FREE FREE TALK

「わかってる」は何もわかっていないと思え。 #フリフリ012

※「フリーランスのフリートーク」とは、スタッフが独断と偏見と気分で綴るコラムです

 
毎回刺激的なタイトルですみません、思ったことを強めに言わないと伝わらないことが多々あると、最近しみじみ思う後藤です。
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ、ポイズンっ!という名フレーズをこしらえたのは反町隆史ご本人です。あの人天才だと思う。
 
しかし最近、しみったれた四十路BBAのぼやきみたいになってるのでちょっと反省して、今回は自分の仕事に絡めておもしろおかしく書いてみたいと思います。
(おもしろおかしくとか、先にハードル上げて大丈夫かよ)
  
 
 

結局あんた何やってんの問題

さて、20代中盤に社会人になって、遅咲きですけどそれでも10年以上が経ちました。
結局何やってる人なのかわからないとよく言われますが、本人もあまりわかっていません。
ハイパー・メディア・フリーターと名乗ってます。
なんかそういう周辺で色々やってる人、ということで。
 
そんなよくわからない仕事の中でも割とわかりやすいのが、「ライター」という肩書です。
「ライターの後藤さん」と紹介されることが多いんですけど、ふたを開けたら補助金申請のためのプラン作りをやっていたり、新卒採用の動画のディレクターをしていたり。まぁライターもしてますけど、もう少しまじめに言うと、ライターで必要なスキルを分解して使っている、という感じです。
 
かつては雑誌の音楽コーナーを担当していて、色んなアーティストさんの取材をさせて頂いておりました。
なかでも、夏木マリさんのかっこよさにはシビレました。
ブライダル誌のエディター時代はドレス原稿もリング原稿も山ほど書きました。
とはいえいまでも純粋にライターのお仕事もさせて頂いていまして、昨年末は久々に音楽ライターとしてH ZETT Mさんに取材させて頂きました。
  
 
 

ライターのスキルは誰にだって有用であると言いたい件

現在デスクを担当させて頂いている「フクリパ」では、ずっと前からやりたかった「大学生ライター」という軸での企画も展開しています。
ライターって、「文章が上手に書ける人」って思われがちな気がしますが、まぁそういう側面もあるというか日本語の基本的な使い方を間違っていたらさすがにダメなんですけど、本当に必要なのは「聞く力」「引き出す力」だと私は思っています。
そしてその力は、ライターだけに必要なスキルではなく、社会で生きていくうえで、持っていないより絶対持っていたほうがいいスキルだと考えています。
 
そんな「取材する」「記事を書く」「デスクに添削してもらう」「世に自分の記事が出る」という一連の流れを通じて、誰かが知らなかった情報をお届けできることの喜びを、大学生にぜひ味わってもらいたいなと思い、クライアント様のご理解を得ていくつか進めてきました。
実際、その経験を経て、劇的に企画力が上がっていまゼミ内に取材班まで作っちゃった子もいます。その話はまたいずれ書こうと思っています。
 
そんな「聞く力」「引き出す力」は、営業職に就けばヒアリングの情報量が多ければ多いほど、提案力も得意先とのコミュニケーションも格段に上がります。
事務職の人も、スタッフさんが「何をして欲しいのか」を想像し、聞きだし、いずれは察する力がついて、頼りがいのある存在になります。
言葉は人間が持つコミュニケーションの道具なので、この力がなくてもいい仕事なんてないんですよね。
 
 
 

アーティスト取材が教えてくれたこと

ということに、私が気づき始めたのが、先のアーティスト取材の頃でした。
アーティストさんが福岡までプロモーションで来られた際に、雑誌の担当として取材の時間をもらうわけですが、ということは、すでに東京のメディアでアルバムのコンセプトなり次のツアーへの抱負なりは何度も聞かれているわけです。
私がアーティストの立場だったら、地方に来てまで同じ質問をされるのは「またかよ!?」ってならないかな、と思ったことがきっかけです。
 
以降、どのメディアにも共通する部分に関してはこちらで事前に要約しておき(福岡で取材する頃には、全国誌は大抵発行されているので事前に読めばわかる)、「プロモーションとしてのこの部分はもちろんふれますね」とお伝えしたうえで、もっとそうではない、アーティストさん自身のこと、福岡について(公演で来福する際の楽しみとか)、雑誌のターゲットと共通するような話題や悩みなどについて聞くようにしてきました。
そうするとですね。
「●●という雑誌の編集者」ではなく「後藤」として、一対一での会話になるんです。
 
テレビでよく見る人に取材するって、ちょっと不思議な感覚なんですが、こちらは相手のことを何度も見ていて存じ上げているけれど、もちろん相手は私のことなんか知るわけがないんですよ、この温度差ってかなりのもんです。
ただ、アーティストさんも取材に慣れていらっしゃるので、そういうもんだと思ってちゃんと相手もしてくれるんですが、ここでちょっと違う深度での会話を投げてみると、その人の人となりや意外な面などがにじんできて、よそのメディアでは書けないような話がでてきます。
 
とはいえ、それを狙ってうやうやしく迫っても、感性豊かなアーティストさんは嗅ぎ取ります。
もうここからは「俺、女優!」ってメンタルが必要なんですが、本当にその人のことをめっちゃ知りたい、と自分に暗示をかけて聞くようにする。
そうすると、いつの間にか本当に知りたくなっていて、結果嘘のない取材になっている……書いていて思ったんですが、私かなり単純だなぁ…。
 
 
まぁそんな感じで、取材から学んだことを仕事に活かしつつ、いまは就職活動をはじめる前の学生さんにもそんな機会を持ってもらうような活動もしています、というお話ですが、本当に言いたかったのはここからです(フリフリ史上最も長い前振りですみません)。

 

もしあなたが岩下志麻さんに取材できるとしたら、どんなことを聞きますか?

後藤、極妻を10周はしたほどに大ファンです。
「わてや。」
「あかん!」
「あんたっ!」
などなどたった3文字で世の中を黙らせる志麻姐さんの代表作ですが。
 
もし私が志麻姐に取材できるとしたら、極妻の話は聞きません。
最初のご挨拶の際に、どれだけ極妻を見てきたか、も語りません。
 

それはなぜか。
 
 
ここが今回のタイトルです。
 
いま、コロナでいろんな価値観の渦がうまれています。
乙武さんが
「コロナが消え失せても、満員電車には乗れない人々がいるのです。
 コロナが消え失せても、学校には通えない人々がいるのです。
 コロナが消え失せても、劇場やライブハウスにいけない人々がいるのです。
 選択肢を増やしてほしい。それが私の願いです。」
と書かれていてはっとしました。
 

 
ある農家の方が「農業が補助金だされると必ず批判がでてきた。でもいま皆さん、給付金もらおうとしていますよね?僕ら農家はずっと前からそういう非常事態を何度も経験してきていたんですよ」と言われていてドキッとしました。
 
 
「わかっている」つもりで発言していることが、おそらくは半分もわかっていない。
それは「わかっている」のではなく、「知っている」だけなんです。
現時点の知識・情報では「ここまで知っていて、こう思う」けれども、可能な限り「もっと調べてみよう」とすること。
特にネガティブなメッセージは、ことさら気を付けたいと思います。
 
批判する前に。
文句を言う前に。
「どんな背景があるのか」を知ろうとするだけで、怒りはかなり沈静化すると思います。
(今回はここを長く書くとまたしみったれ四十路BBAになるのでこのくらいで止めておきます。自粛!)
 
 
 
長くなりました。
最後に志麻姐についてです。
もし私が志麻姐に取材できるとしたら、取材すべき対象についてお話を伺いながら、これまでに出てこられた極妻以外の作品について聞いてみたりすると思います。
ガチ緊張するやろうけどね。
ただ、↑ここ↑が一番極妻に触れない理由でもあります。
 
志麻姐は、「極妻のイメージが定着しすぎていることが悩みである」と何かの記事で読んだことがあります。怖くないのに必要以上に怖がられたりして、傷ついたことがあったのかもしれません。でもその他のインタビューなどを観ていると、全然この手の質問に答えているし、素の志麻姐はおっとりしているとか、役柄にはまりこんで撮影中はそのキャラクターが抜けなくて周りをびっくりさせたといったエピソードもたくさん出てきます。
そう、どっちかわからんのです。
だからあえて、「いやー僕、極妻の大ファンで!」みたいなうっすいトークで入らないようにしよう、ということです。
(本当に取材できる日が来たらこんな暢気なこと言わずにもっと調べ倒しますが、現時点では暫定です、仮のお話でございます)
 
極妻から脱却したかったのに、象印のCMで同じようなキャラクターを求められた。個人的にはおもしろかったけど、ご本人は納得いかれていないかもしれない。
逆にいまはもう、あまりイメージにこだわっていないかもしれない。私が読んだのは、何かほかに意図のある誘導記事だったのかもしれない。
わかりませんよね。
だから、一通り取材が終わってから、雑談レベルで志麻姐に話題を振ると思います。
「実は、めちゃくちゃ極妻好きなんです」
「でも、一時期極妻のイメージで語られることを避けたがっておられたと耳にしておりましたので、取材中にはお伝えするのを控えておりました」
と。
最初にこれを言うのと、最後に言うのでは、きっと志麻姐のリアクションが違うと思うんですよね。
 
 
 
そして願わくば、志麻姐にあのドスの利いた声で言われたい…
「あんた、わかっとるやないの」
と(笑)。
 
(もちろん完全妄想です)

© Freelance Inc.