202003/21
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人の行動を変えるには、強い動機もしくは仕掛け? #フリフリ005

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2020.03.21

人の行動を変えるには、強い動機もしくは仕掛け? #フリフリ005

2020.03.21
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人の行動を変えるには、強い動機もしくは仕掛け? #フリフリ005

※「フリーランスのフリートーク」とは、スタッフが独断と偏見と気分で綴るコラムです

こんにちは。株式会社フリーランスのコンサルチームを担当しています、中小企業診断士の富永です。
「エスカレーターは歩かず2列で利用しましょう!」
最近いろんなところで耳にするメッセージですね。2018年後半頃から2020年東京五輪に向け、言われ始めましたがなかなか定着しません。

先日東京に行った際、羽田空港の出発ロビーに上がるエスカレーターでも左側にきれいな1列ができていました。幸いその時間帯は混雑していなかったため、エスカレーターの入り口に待ち行列はできていませんでした。しかし地下鉄や鉄道の降車時などホームのエスカレータ前にすごい待ち行列ができている光景を見たことはありませんか? 待ち行列ができているのになぜか左側に1列。右側はスカスカの状態です。

急がない人は左側に立ち、急いでいる人に右側を開けることがマナーと、今までずっといわれれていました。しかし本来エスカレーターは歩くことを前提に設計されていないため歩くと危険なこと、事情があって左側に立てない人がいる、そもそも輸送効率が悪く混雑時は入り口に待ち行列ができる、などこのマナーの必然性はあまりないようです。

ネットでリサーチしたところ、そもそもこの風習は1980年代から始まり、マナーとして定着したようです。そして今そのマナーを変えようと、様々なキャンペーンや取り組みがなされていますが、どこのエスカレーターを見てもやはり左1列。
(ちなみに関西では右1列のようです。福岡は、東京スタイルで左1列なのですが、皆さんの地域はいかがでしょうか?)

そんな中、一部の場所では習慣が変わった場所があります。名古屋市では交通局が15年かけて熱心に呼びかけてきた結果(仕掛け?)、エスカレーターの2列並びが浸透しているという全国でも珍しい地域となっています。同人誌などを販売するコミックマーケット(コミケ)でも1年以上にわたって「2列に整列して歩行禁止」というルールが定着しています。これはもし、会場で事故が起こればコミケの開催に影響が出るかもしれないという危機感(強い動機?)から自主的に取り組んだとのことでした。

私は、人の習慣を変えるには、2つのアプローチがあると思います。一つは強い動機、もう一つは無意識に行動を変えてしまう仕掛け、です。このことは実は私の仕事であるコンサルティングの現場でも実感するところです。会社組織でも、人の習慣を変えることはすごく難しいといつも感じています。特に組織に定着した意識や習慣というものは容易に変わりません。例えば、「工事車両から離れるときは車止めを必ずしよう!」と言う取り組み。定着するのに、実に3年ほどかかりました。

エスカレーターの左側1列というマナーに対して、変えないといけないと言う強い動機を喚起することはかなり難しいと思います。特に日本人は、人と違った行動をすることが苦手な国民性(だと思う)なので、尚更難しいと思います。

したがってもう一つの方法、「仕掛け」で行動を変えるしかなさそうです。

大阪大学の松村真宏教授が「仕掛学」と言う学問を提唱しています。世の中に仕掛けというものはたくさんありますが、仕掛学では、人の行動を変える「きっかけ」になるものを仕掛けと呼んでいます。有名なところでは「バスケットゴールのついたゴミ箱」があります。思わずゴール目掛けてゴミを投げ込みたくなりますよね。ゴミはちゃんとゴミ箱に入れてください、と言わなくとも自然にこちらの意図の通り行動してしまいます。

実は認知科学分野でも、デザインで人を動かすという研究があります。デビッド・ノーマンという認知科学者が、アフォーダンスという概念を使って説明しています。「アフォーダンスという言葉は、事物の知覚された特徴あるいは現実の特徴、とりわけ、そのものをどのように使うことができるかを決定する最も基礎的な特徴の意味で使われている」(「誰のためのデザイン?」P14) 簡単にいえば、デザインが人の行動を誘引する、ということです。例えばドアノブの形を考えてみましょう。丸いドアノブは回して引く、ドアノブがなく平板があれば手で押す、縦の溝があれば横に引く、とほぼ無意識に体が動きます。ドアノブのデザインがきっかけとして、人間の行動を無意識に誘引しているわけです。

同じように、会社の組織を動かすためには、強い動機を与えるか、仕掛けを作り込むか、という視点で考えれば、いろんなヒントがあると思います。

どうしたら社員さんに強い動機を与えられるのだろうか?
どうしたら社員さんが自然に動ける仕組みが作れるだろうか?

社長の皆さん、常に考えておきましょうね!

おまけ)エスカレーターは立ち止まって2列が効率的というのは本当?

いくつかの研究がありますのでご紹介します。

・岩手県立大の元田良孝名誉教授(交通工学)によると、エスカレーターの利用者全員が2列に並んで歩くと、輸送効率は全員が立ち止まった場合の1.5倍になるそうです。1時間あたり4千人の輸送能力が6千人に上昇する計算です。

・同じような研究がイギリスにもあります。
The simulation that proves standing only escalators work on the Tube
https://www.telegraph.co.uk/news/2016/03/22/the-simulation-that-proves-standing-only-escalators-work-on-the/

・めざましテレビが番組で検証した結果、長さ約10メートルのエスカレーターを46人が上り切るまでの時間について検証しました。何も指示をせずに普段通りに利用してもらうと、36人が左側に立ち止まり、10人が右側を歩いて上り、かかった時間は1分24秒。次に、2列に並び立ち止まったままで全員が上り切った時間は1分3秒。10人が右側を歩いた時より、21秒短縮されるという結果でした。
https://www.fnn.jp/posts/00402390HDK

お願い)

エスカレーターを利用する時に、立ち止まって2列で利用するための仕掛け、おもしろいアイデア募集中です。
アイデアはこちらまで→kazunari.tominaga●gmail.com ※●部分に@を入れてください

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