202012/21
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フリーランスを保護?国の指針案の背景とは #フリフリ024

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2020.12.21

フリーランスを保護?国の指針案の背景とは #フリフリ024

2020.12.21
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フリーランスを保護?国の指針案の背景とは #フリフリ024

※「フリーランスのフリートーク」とは、スタッフが独断と偏見と気分で綴るコラムです
※今回は2020年12月18日に政府が発表した「フリーランス保護の指針案」を受けて、
 弊社顧問弁護士の是枝先生にご寄稿いただきました

株式会社フリーランス様の顧問をしている弁護士の是枝秀幸と申します
今回は、18日に政府がフリーランス保護の指針案をまとめたとの報道がなされたことを受けて、
私はスタッフではないのですが、勝手ながら寄稿させていただきました

先に、株式会社フリーランス様と私の関係だけ触れておきますね
両者の関係は、代表者の鈴木貴人様がフリーランスだったころに私と顧問契約を締結させていただいてから、法人化を経て、現在に至るまで、約5年間のお付き合いになります
その間、契約書類等のチェック・修正、契約締結交渉等、主に紛争の予防の観点でご相談をいただいており、幸い、大きなトラブルもなく組織や業務を発展・継続されています
なお、フリーランスの時点で弁護士と顧問契約を締結する例は、そう多くないですが、実はかなり重要であり、躊躇なく顧問契約を締結したことに先見性を感じました

フリーランスの定義とは

さて、本題に入りたいのですが、そもそも、フリーランスとは何でしょうか
なぜ、フリーランスが法令などで保護されることとなったのでしょうか

みなさんがフリーランスという言葉でイメージするとしたら、組織に所属していないフリーの、プログラマやデザイナー、コンサルタントやカウンセラーあたりでしょうか
さらには、ライターやカメラマン、弁護士や税理士なども含めてもよいかもしれません

フリーランスという言葉について、今のところ、法令上の定義はなく、多義的です
厚生労働省は、フリーランスを、「発注者から委託を受け、主に個人で仕事をして報酬を得る者」と位置付け、「雇用類似の働き方」と呼んでいるようです
ある団体は、フリーランスを「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」としているようです
いずれにせよ、ここでは、フリーランスを、雇用そのものではなく業務委託(請負・委任)で仕事をして報酬を得る働き方であり、個人事業主の一種と考えることにします

フリーランス=雇用関係ではない、ということ

ここで重要なことは、フリーランスが、雇用そのものではない、ということです
(偽装請負や偽装業務委託の問題については、ここでは省略します)

そのため、もし雇用であれば、使用者と労働者の間で指揮命令関係がありますし(拘束的)、労働者は使用者から労働法の下で一定程度保護されますが、
フリーランスは、雇用ではありませんので、原則として、発注者とフリーランスの間で指揮命令関係はありませんし(独立的)、フリーランスは発注者から労働法の下では保護されないことになります
もっとも、実際には、発注者とフリーランスの間で、経済的・社会的な依存度や従属性、組織力・人的物的資源・知識経験の差がかなり大きい、という傾向にあります
そのため、仕事を切られないかという不安や、本来要求・拒否すべきことの知識経験の不足から、信頼関係名下に、無理や我慢を強いられることもすくなくないようです

例えば、契約書を調印していない、納品後にエンドユーザで成果物が不要になった、納品後もエンドユーザから元請業者へ代金が支払われていない等を理由に、納品したのに発注者からフリーランスへ報酬がなかなか支払われない、ということは、すくなくないようです
また、業務委託関係ではパワハラ・セクハラはなかなか問題にしにくいようです

こうした背景から、フリーランスが保護されることに

そこで、フリーランスも独禁法等で保護されることを明確にすることにしたわけですね
以下は政府のここ数年間の検討状況です

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01811.html
https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/jinzaisetsumeikai_files/jinzai_pamph.pdf

では、具体的にどのように保護されることとなったのでしょうか

詳細は、上記の2つ目のリンク先が参考になると思いますので、以下、独占禁止法に関するわかりやすいところだけ、一例として紹介させていただこうと思います

例えば、以下の行為は、優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号)や、その他の不公正な取引方法(同法9条6号)で、禁止されています

発注者が、フリーランスへ、過度の専念義務、競業避止義務、秘密保持義務を課す等して、そのフリーランスが他の発注者から受託することを事実上または契約上一切禁止する行為
発注者が、フリーランスへ、発注者やエンドユーザの一方的な都合で、成果物の受領を拒否したり、代金を一部減額したりや支払を延期したりする行為

なお、下請法の適用対象であれば、フリーランスでも、発注者に対し、契約書面交付義務(下請法3条)や遵守事項(下請法4条)等を主張することができます

今回、独禁法や下請法の適用について政府が指針で明確化することで、発注者の法令遵守体制が整備されるとともに、フリーランスが発注者へ意見を言いやすくなるとよいですね

それと同時に、「まだ小さくて仕事をもらう立場だから」等と思ったりせず、フリーランスも経営者としての意識を持つことも重要ではないかと思います
例えば、10万円以上の契約は、契約書面なしでは内規違反とする等、曖昧・不当な条件の仕事を断るための仕組みづくりも必要だと思います

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